50代の男性。
症状は、夜眠ってから1〜2時間ほどすると胸のあたりがモヤモヤとして目が覚めて眠れなくなることと、身体のあちこちが痒くなること。6年くらいこの症状が続いており、あちこち受診して調べたものの、これといった異常がみられないとのことでした。
皮膚科でもらった飲み薬や塗り薬を使っていましたが、効果がなく止められたそうです。
札幌市内の漢方薬局で相談し、漢方薬2種類を購入して5年くらい飲んでいたそうですが、そちらも改善する兆しがなく、探してこちらにご相談にいらっしゃいました。
西洋医学的には手がかりが難しいようですが、症状を伺ったときに傷寒論という漢方の古典に書かれているある生薬を使うべき目標そっくりな症状であるとすぐに気が付きました。
その生薬を含む処方群を候補に考えて、全身状態をチェックして最も反応が強い部分を解析していくと、その候補の漢方薬の中に明らかに反応が良いものがあるのがわかりました。
その漢方薬をメインにして、その漢方薬だけでは取り切れない血熱に対して補助を検討して、漢方治療を始めました。
あまりに難解なご症状で他の漢方薬局さんでも年単位で悩まれたものなので、私も過信せずに2週間後にまた経過を調べましょうと短期間でスタートしてみました。
2週間後に経過を伺うと、漢方薬を飲んでから3日位すると眠れるようになって、胸のモヤモヤも痒みも出ないですとのことでした。私も驚きました。
かなり経過が良いので、同じ漢方薬で経過を見て、短期間のうちに一旦漢方治療を終了しました。
年単位で悩まれていた症状でしたが、古典の記述にヒントを得て漢方治療をしたところ短期間に改善できた症例でした。
傷寒論(しょうかんろん)という漢方の古典は、漢方処方の運用方法について書かれた二千年くらい前のものです。
葛根湯や小青竜湯など、現在も使われている多くの漢方処方が傷寒論を原典としています。今回の治療に用いた漢方処方は傷寒論の処方ではなく、後世方と呼ばれるあとの時代に生まれた処方です。しかし、傷寒論の太陽病中編に書かれたある部分が症状とマッチしていたため、そこから発想を広げて治療に結びつけることができました。古典も柔軟に応用できると思いがけぬ症例に出会えるものです。